ヲタクとリア充の狭間にて。

 

ヲタクだから彼氏がいないのか。

はたまた彼氏がいないからヲタクなのか。

 

このいたちごっこな疑問を抱えて早20年弱。

根っからのヲタク気質なわたしは、小さいころからジャンルや次元に関わらずあるとあらゆる『ヲタクな趣味』足をつっこみ青春と財力の全てを費やしてきた。

その結果、10代のころ、同級生の甘ずっぱい恋バナをファミレスで長時間ドリンクバー片手に聞き役に徹したわたしは20代のなった今でも場所を居酒屋、飲み物をお酒に持ち替えただけで、相変わらず恋愛ネタに関しては聞き役のポジションを守り続けている。

 

好きだった人がいなかったわけではない。

浮いた話のひとつやふたつあったような気もするが、記憶にほとんどない。

あるのはヲタクの楽しい栄光の日々。

 

しかし、このままじゃいけない。

わたしはもはやいるだけでちやほやされたであろう世代をとうに飛び越え、所謂アラサー世代に突入。

フェイスブックで同級生たちはやれ結婚、やれ出産。

なかには結婚、出産、離婚と大体人生の全てを一周経験しつくした強者もあらわれ、リア充という人生最重要項目にエントリーさえしてない自分に焦りを感じている。

 

ヲタクだからいけないのか…?と思う自分もいるが、それは結局のところ言い訳にすぎないというのはわかっている。

なぜなら、わたしはいわゆる『隠れヲタク』。

 

相当仲良しかつ、趣味を理解してくれるであろう人間にしか、自分がヲタクであることをばらしていないからだ。

 

そうだ、違う、ヲタクだからじゃなく、長年『ヲタク』だったからこそ知らずのうちににじみ出る弊害によって気づかないうちに現実世界での幸せを遠ざけているのではないだろうか?

 

自分を見直すためにここで、いくつかヲタクとリア充における見解の違いとそれにより起こる弊害、ヲタ生活に蔓延る問題点をまとめてみようと思う。

 

(全て、わたしの独断と偏見によるものです。わたしの周囲約10メートル以内にいるヲタクたちを参考にしたあくまでもひとつの見解であり、個人の容姿、ヲタクの守備範囲、その他もろもろは関係なく大きな意味でのヲタクを指して解析しています。よって批判、中傷などは受け付けません。)

 

 

1、ヲタクはイケメン好きとは限らない

 

ヲタクはイケメン好き…理想が高い…と勝手に理解されることがある。(特にアイドルヲタ)。

顔が好きで、顔が好きで、顔が好きなんだからファンなんでしょって。

まず、それが大きな間違いなのである。

 

ジャニーズ式にここでは好きなアイドルを『担当』と表す。担当を好きになるのはなにも顔だけじゃないのだ。一般の人が恋をするように長年時間をかけて、彼らの好きなことろをひとつずつ見つけ、増やし、最終的にもっと好きになる…最初は顔で入ったのかも知れないが、だんだんとその人の人間性にも惹かれていくのがアイドルヲタ極みであり楽しみだとわたしは考える。

それゆえに、同じグループの違う人を好きになったり、もっというと後輩グループや先輩グループ、似た系統の事務所に鞍替えすることも起こりうる(担降り)。

 

アイドルを長く好きでい続けるためには顔以外に尊敬できる部分があったり、人間性にも惚れ込まなければ難しいのだ。

 

 

なので、一概に全員が全員イケメン好きとは限らない。

むしろ現実世界ではイケメンが苦手な人のが多いのではないだろうか?

イケメンのファンになることは得意であり、ミーハーな気持ちなら異性とも仲良くできるけど、好きの矛先をこっちに向けられると困る。どうしていいかわからない。

なぜならヲタクとしての自分はアイドルに好きは飛ばすけど、飛ばされることにはなれていないからだ。

イケメンからの好き攻撃をまともにくらったら簡単に自分が自分じゃなくなる怖さをだれよりもヲタクはわかっている。だからこそ、迂闊にリア恋に踏み切れない部分がある。

 

イケメンは見るものであって関わるなんておこがましい!

とわたしは密かに心の中で自分にストップをかけている。

ファンになることには抵抗がないけど、彼氏という自分と同等の存在になるということを極端に恐れてしまう。だから、イケメンじゃなく、フツーの人でいい。フツーの。

好きなアイドル=好きになる人じゃ決してない。

そして好きなアイドル=理想のタイプとは必ずしも限らない。

(ちなみにわたしの担当は背が小さいが、わたしは常日頃から背の高い人と結婚しようと心に決めている。)

 

ヲタクのいう

『担当と結婚したい~』は

『今まじ担当への愛が最高潮に高まって結婚という人生最上級の幸せに匹敵するくらい脳内がお花畑だよ!』の略だし、

『担当が彼氏だったらな~』は

『この世のメンズが全て担当だったら一人ぐらいわたしと付き合ってくれるかもしれないけど、そうじゃないから現実世界でわたしを幸せにしてくれるようなわたしだけの担当がいればな~』の略でしかない。 

現実と趣味は別だってわかってるって!!!!!

 

と大きな声で非ヲタの全人類に向かって叫びたい。

 

 

 

 

2、現実とヲタク世界のギャップ

 

妄想が得意なのは持って生まれたわたしの才能である。

よって、その無駄に鍛えられた妄想力のおかげで現実とのギャップに耐え切れず現実から逃げ出し、ヲタク世界に閉じこもったことも一度や二度ではない。

 

アイドルは好きになるのも嫌いになるのも自由。

滅多なことがなきゃ、アイドルから嫌われて傷つくこともない

楽しいことだけ考えてられる。

 

ヲタクとリア充で一番違うのが傷つくということがないことではないか。

確かに好きなアイドルが結婚した、引退したとかで傷つくこともあるだろう。

でもそれは『アイドルだって…』で割りきれる。

現実世界の彼じゃなく、アイドルとしての彼を好きだといい聞かせることもできる。

それでも許せなきゃ、ただ自分がヲタクを辞めるだけ。

 ヲタクで傷ついても逃げ道がある。

 

所詮ヲタクとアイドルなんだをいう見えない固定観念の薄いバリアで覆われた世界にいる限り、肉体的にも精神的にも深く傷つくことはない。

 

しかし、現実世界ではそうはいかない。

 

ヲタクは少し現実世界で傷つくと、アイドルに癒しを求める。

ヲタ友も我々の元の世界への帰還を手放しで喜んでくれるだろう。

アイドルに癒され、それによりもっとアイドルを好きになる→結局ヲタクの世界にカムバック。

ここ数十年ヲタクと現実をさまようわたしがいうのだからあながち間違いじゃないと思う。

少なくともわたしにとってヲタク世界とはもっとも居心地がよく、何度も何度も帰ってきたくなる場所なのである。

 

 

 

 3、常に先に決まるスケジュール

 

リア友と遊ぶスケジュールを組む際、自分コンサートやイベントのスケジュールのせいでなかなか決まらないことはないだろうか?大体ヲタクゴトのスケジュールって数ヶ月前…早いものでは半年以上前に予定が決まるものもある。

それに向けてヲタクたちは同行者を募り、チケット争奪戦を勝ち抜き、交通手段を手配し、遠征にいたっては当日の宿泊場所を考え…

とにかくたくさんの労力を使ってこの日に向けて準備している。当たり前だがコンサートの日にちをずらすことはできない。

 

そこにたまたまリア充な予定が入ったとしよう。

あなたはどっちを選びますか?

 

…当たり前にヲタクゴトだろう。

リア充な生活をおろそかにしているわけではない。

だって、先に約束したほうの予定優先するのが当たり前でしょ!

数ヶ月前から決まってるし、すでにたくさんの労力費やしてる。

これは当たり前の選択といえよう。 

しかし正直にコンサートというとこっちの世界を理解してくれていない人はただ、ただ、わたしの行動に呆れるだけ。(“またコンサート?(笑)”がデフォルト。)

 

確かに友達ならいつでも会えるっていう甘えも少しはあると思う。

でもそのくらいは許してほしい。

だってアイドルヲタはその日逃すといつ担当に会えるかわからないリスクを常に背負ってるんだからっ!

 

こうして、だんだんリア充と疎遠になっていくわたしである……。

 

 

4、趣味を堂々と語りにくい

 

今更ですが、わたしはヲタクということに誇りをもっている。

コンサートでのわたしは生きている中で一番輝いているし、一番かわいいと思う…

しかしながら合コンなどで男の子から大体聞かれるこの質問

 

『趣味はなんですか?』

 

に正直に堂々とヲタク趣味を答えることができない。なぜなら相手に引かれることがわかっているのにわざわざに口にするほどバカな女じゃないからだ。

 

『趣味はアイドルを追っかけることですね。コンサートは地方、海外含めていけるところは全部行って、テレビの観覧にも行きます!家にいるときはHDDや雑誌の整理してます。友達とカラオケに行くときはヲタ曲歌うんで、歌詞はもちろん、振り付けも完璧ですよ☆通勤時間はTwitterみて情報収集したり、画像集めたりしてます!』

 

なーんて本当のこといったらその場がしらける。一緒にいった友達にも迷惑がかかる。

そこはいい大人だから『DVD鑑賞と音楽鑑賞』ってありきたりな趣味を投下する。

あながち遠すぎる嘘でもないし。

でもそれ以上つっこまれた場合困る。

『どんなジャンルの音楽聞くの?』って。

 

もちろんヲタクだから曖昧にしか答えられない。

ここでかっこつけてミスチル!なんて答えて相手がミスチルファンだったりしたりしたら手に負えなくなる。

 

これを聞かれたらわたしはいつも

『割と洋楽聞くかなー』って。←

 

洋楽なら幅広いし大体つっこまれない。きっと大丈夫(笑)

友達のみなさん、わたしがこの言葉をいっていたらピンチだって察してくれ!

 

 

ここでわたしは考えた。

趣味は趣味でも人に言える趣味といいにくい趣味の違いってなんだろうと。

それって深く考えると、その趣味に関してヲタク以外の人同士でも盛り上がれるか盛り上がれないかの違いなんじゃないかと。

 

たとえばスポーツ観戦。

『わたしサッカー好きなんです』っていった場合、サッカーを全く知らない相手でも“サッカーがどんなスポーツであるか”大体想像できる。

Jリーグどこのチームのどこのポジションやってる●●選手まではわからないかもしれないが、日本代表のホンダやウッチーなんかはわかるかもしれない。

 

つまり、この趣味は話し相手にとってもいろんな方向に引き出しがある話題なのである。

 

しかし、一方でアイドルグループを語ろうとすると

知名度にも関係するかも知れないが、大体グループにいる人の名前さえうる覚えであることが多い。

ドラマなどで使われた歌じゃないとわからない(おそらくサビだけ)。

しかもアイドル好きだと自分でいう人はかなりコアだと最初から相手に構えられるため、ただでさえ少ない会話の引き出しをこちらが必死で引き出そうとしても相手が力ずくで引き出しをあけさせないように押し戻している感が否めない。

 

趣味に関しては手っ取り早く一点だけを集中的に深く掘り下げていくドリル女子より、すぐに深くは掘れないけど、じわじわ広い範囲を掘ることができるショベルカー女子のほうが、この世知辛いリア充世界を生き抜いていけるのだ。

 

一般世界と共有できる会話のトンネルを掘ることが、わたしたちヲタク女子に必要なスキルだとわたしは思う。

 

 

 5、現実の幸せに疎すぎる

 

ヲタクとは常に小さな幸せを大切に大切に拾い集め、大きな幸せに変えていくプロフェッショナルな人類だと思う。

“目があった”だけでも今世紀最大の幸せ!とばかりに飛び上がり、涙する。自分が直接得た幸せだけではない。アイドルが得た幸せさえも自分のことのように共有できるありがたい設備がヲタクの脳にはあらかじめ装備されているのだ。

ヲタゴトの幸せにはこんなに敏感なわたしたちだが、振り返ってみよう。

過去に落ちていたリア充な幸せはうまく拾えてきているだろうか?

 

そう考えてみると、わたしの答えはNO。

ヲタク世界に長年いるあまり、現実世界の幸せを掴むことが億劫になっている。

今でも十分幸せ…と自分に言い聞かせ、現実世界で幸せを掴む一歩を踏みだすことを拒んでいる自分がいる。つまりは自分に自信がないからだ。

 

ヲタク世界では自分がアイドルの視界にはいることなんてごくまれ。

自分は見つめるだけ見つめることができるけど、相手に自分は認識されない。

認識されても相手の記憶にはよっぽどのことがないと残らないことだって頭のどこかで理解している。

だから堂々と相手を好きなこと公言できるし、愛を伝えても恥ずかしくない。

むしろ、愛を伝えることがアイドルヲタクたちのたった一つの使命であり、仕事である。

それはCDやDVD、出版物の売り上げだったり、コンサートの集客人数であったりに反映されている。

 

しかし、一方で現実世界では、相手の視界に自分が入る。

アイドルはヲタクを選べないが、好きな男の子はもちろん自分以外の女の子を選ぶことができる。とりたて美人でもなく、気立てがいいわけでもないわたしはいつ彼の選考から自分がもれるか、いつだってひやひやしていなくてはならない。そんな生活がしばらく続くと、小心者のわたしは相手からなにも言われていないのに勝手にドロップアウトしてしまう。

この根性のなさが、わたしがいまだに幸せをつかめない大きな原因の一つであると言えよう。

 

ヲタク界では素直に小さな幸せでも受け入れることができるのに、現実世界での幸せを“こんなにわたしが幸せなわけがない!”と拒んでいる自分がいる。

 

現実世界での幸せを素直に受け入れることができたら、それは現実世界で幸せを手に入れる第一歩なのかもしれない。

 

  

 

 

ここまでヲタクが恋することで起こる弊害や問題点についていろいろ書いてきたが、リア充という現実世界にばら撒かれた種に花を咲かすか、根元から腐らせるかは本人の力量次第であることはいうまでもない。

ヲタクという基盤の上で生活している以上、わたしたちが幸せを掴むためにはまわりにいる人たちよりも数倍の努力と根性が必要なのだとわたしは思う。(ただ、ヲタクに費やす情熱をほんの少し恋やら愛やらに向ければいいだけの話だが…)

 

昨今、自民党でも“婚活・街コン推進議連”なんていうのが発足し、もはや日本は国を挙げてわたしたちの結婚を応援してくれている。

その期待にこたえるべく、

恋せよ、ヲタク女子!